ポンコツでも丁寧に暮らせますか?

丁寧な暮らしをまだ諦めない、ガサツでポンコツな母ちゃんの日記

映画【荒野に希望の灯をともす】

 

アフガニスタンで35年に渡り、現地の多くの人々の命を救い続けた中村哲医師を追ったドキュメンタリー。

 

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隣の市民図書館で上映があると知り、子供たちを母に預け、以前からこの作品を観たいと話していた夫と久しぶりに映画デート。

二部上映開始時間の15分前に到着すると、一部の上映後のトークショーがまだやっていたので、そっと入場して参加。客席は9割も占められていて、その年齢層は還暦を迎えたねぎの両親ぐらいか、さらに上。若い人は私たち夫婦と、他に数名いるかいないか。現地で中村医師と一緒に支援活動を行っていたという年配の女性が質問に答えていた。

「中村さんの行った事はとても大きな事で本当に凄い事ではあるけれども、私たち一人一人が自分の置かれた場所で小さな灯を持ち続けるという事が大切なんじゃないか。」

という趣旨の話をされていた。すでに胸熱。早く観たい。

 

トークショーが終わり、一斉に客席が空いた。二部の観客にも、やはり若者の姿は少なかった。そんなもんか。

 

映画が始まり、なぜか涙が仕切りに溢れる。字幕で映し出される中村医師の生前の言葉が一つ一つ、重く心に響く。アフガニスタンが国を挙げて弔うほど、多くの人々の命を救い、希望の灯をともし続けた中村医師は、「自分も一人の卑しい人間だ。」と言う。

忍耐強く、裏切られても裏切らず、絶対に見捨てないという強い覚悟を持って人々の信頼を築いていく姿、その眼差しの力強さに圧倒された。

大干ばつで貧困が深刻になっていき、病気の治療どころではなく、飢餓で生死を彷徨う子供や老人が溢れる状況になった時、中村医師は白衣を脱ぐ。

医療の前に、命の水を。

土木を一から学び、自ら重機を操縦し、現地医療スタッフを説得して用水路建設に着手。

日本を含む世界の大国らが、対テロ報復として、干ばつと貧困に苦しむ小さな国を叩きつける中、中村医師は人々の命を救うため、真っ赤に焼けた肌で大地を掘っていた。

 

干ばつで村を離れていた人々が、用水路の話を聞き、次第に少しずつ戻ってくるシーンには胸が熱くなった。

「自分たちの手でこの国を立て直したい。出稼ぎに行かずに、家族と一緒に暮らしたいんだ。」

埃だらけのシャツで、重い土砂を運びながらも、彼らは笑顔だった。心からのその表情に、日本には無い豊かさを感じた。生きる喜び、迷いのない信念のような、強く惹かれるものがあった。

その上空には攻撃に向かう米軍機が飛び交う。

『彼らは殺すために空を飛び、私たちは生きるために地面を掘る。』(中村)

 

1本の用水路が荒野を通った5年後、まるで魔法にかけられたように緑溢れる豊かな大地が現れる。これはぜひ、映像で見て欲しい。

 

どんな言葉で表現しても、なんだか薄っぺらい感想になってしまうのだけど、どんな困難な状況でも諦めない凄まじい忍耐と精神力、そして希望を持ち続ける姿に、大きな勇気を貰い、そして、人として真っ当な生き方を見せられて、そうだ、やっぱりそういう事なんだ、それが大事だと、心が軽くなった。それを夫婦で共有できたことも良かった。

 

物も情報も与えられすぎて、生きづらい人が増え、子供の自殺が増加し、なんだか生きることが複雑になってしまっている日本で、この映画を観て救われる人は少なくないと思う。

ポンコツだけど、とにかく人として真っ当に生きたいと改めて思った。

 

 

 

ねぎ